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《進む形》堀内正和

更新日:2019年12月10日

「進むカタチ」写真

《進む形》堀内正和 1983年 212×269×100cm ステンレススチール 碧南市臨海体育館前

碧南の彫刻のあるまちづくり 第1作(昭和58年度)

 立方体を二つに重ねると一つの面(正方形)が密着し、四つの頂点が共有になる。三つの頂点だけが共有になるようにくっつけると、双方の立方体は一つの頂点を互いに相手の立法胎内に挿入し、相互侵犯の関係で結びつく。この関係で連結する形は原理としてあるべき形である。三つの角度(45°、90°、109°28’16”註1)だけで成り立ち、単純明快、秩序正しい感じがする。その魅力に惹かれた僕はこの形に出会った1974年以来、三頂点共有立方体群を作りつづけているが、この《進む形》もその連作の一つ。二つのL字形直方体が二つの立方体を仲介に挟み相互侵犯の関係で連結している。

 二つのL字(Life,Loveなどと想定してもよかろう)は互いに相手の尻尾を咬み註2、二つ巴註3の格好で円環回帰の相をあらわす。この形、矩形面を底面にして立てると全体が安定して落着くが、この作品は立方体の稜線で立っているので全体が45°前に傾き、今にも発進しそうな姿勢である。体育館には安定休息の姿勢より動きだす気合のこもった姿勢の方がふさわしい。二つのL字が抱え込む中央菱形窓の内壁は鏡面で、少しづつずれて相対しているので周囲の光景を錯綜させて映しだす。太陽が放射する光のエネルギーはここで複合反射し、前進の原動力のように明るく光り輝くであろう。

堀内正和

註1 この作品で谷にへこんでいるところの角度は109°28’16”。これは正四面体の中心点と四頂点を結ぶ直線から作る角度であり、Maradiの角度と呼ばれている。

註2 双方の立方体は中間の立方体の中央で1立方体の1/27だけ相互に侵犯している(互いに尻尾を咬みあっている)。

註3 弓を射るとき左手につける丸い皮製の貝を鞆(とも)という。巴は鞆に描いた絵模様のことで、水がうずまく形をあらわしている。

堀内正和氏の略歴
1911 京都市に生まれる
1928 東京高等工芸学校彫刻部に入学
1929 第16回二科展に作品「首」が入選
1950 京都市立美術専門学校(後の京都市立芸術大学)教授となる
1963 第6回高村光太郎賞受賞
1969 第1回現代国際彫刻展(箱根・彫刻の森美術館)大賞受賞
1970 神奈川県立近代美術館賞受賞
1971 神奈川県立近代美術館賞受賞
1975 第3回長野市野外彫刻賞受賞
1976 京都市立芸術大学名誉教授となる
1987 毎日芸術賞受賞
2001 死去

この記事に関するお問い合わせ先

碧南市役所 教育部 藤井達吉現代美術館
電話番号 (0566)48-6602

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