《道標・鳩》柳原義達
鳩は美しい。毎日の日課になっている私の素描のときは、嬉しさに身ごとよろこんでくれる。
私の鳩は孔雀鳩で、その感動は白に光り、そしてゆれ動く。
あるときは、一本の足に、不思議な身動きの安定を求め、あるときは両足にヒロイックなポーズを乗せる。この籠の鳥は、私のそのときどきの意志の方向に姿をかえさせられる。
あるときは風の中の鳩になり、日向ぼっこの鳩になり、嵐の中の鳩にすらなる。私の夢が自然のなかをさまようとき、私の鳩も籠からはなれたかのように思える。自然の息吹と鳩とのかかわりがいつのまにか私の素描になってくる。身動いている不思議な命に鳩がみえてくる。私は彫刻家としての喜びにこのときはひたっているのだろう。
私の手のなかで、大気にはばたく私の鳩がいて、それは空間の動きで生命の美しさを感じる。
柳原義達
1910 | 神戸市に生まれる |
1928 | 日本画を志し福田平八郎の指導を受けていたが、彫刻志望へ転じる |
1931 | 東京美術学校彫刻家に入学。第13回帝展に入選 |
1936 | 東京美術学校卒業 |
1937 | 国画会同人になる |
1939 | 新制作派協会彫刻部の創立に参加 |
1952 | 渡仏、グランド・ショミエールでブールデルの弟子オリコストに学ぶ |
1957 | 帰国 |
1958 | 第3回現代日本美術展で「座る女」優秀賞受賞 第1回高村光太郎賞受賞 |
1960 | 第30回ヴェネツィア・ビエンナーレ展出品 |
1970 | 神戸須磨離宮公園・第2回現代彫刻展で兵庫県立近代美術館賞受賞 日本大学芸術学部教授となる(’80退職) |
1974 | 第5回中原悌二郎賞受賞 |
1983 | 回顧展「柳原義達展」が鎌倉、神戸、倉敷、旭川で開催される |
1986 | 第10回長谷川仁記念賞受賞 |
1996 | 文化功労者に選ばれる |
2004 | 死去 |
更新日:2020年04月07日