災害関連死を防ぐために
災害関連死とは、被災後の避難生活での心身の不調や過労などの間接的な原因で死亡することです。
これに対し、地震による家屋倒壊に巻き込まれて死亡する圧迫死や火災による焼死、津波による溺死などが直接死となります。
近年では直接死だけでなく間接死での死者も増えており、災害の直接的な被害を抑えるだけでなく、間接的な被害を抑えることも重要なポイントになっています。
災害関連死の種類
[出典:熊本災害デジタルアーカイブ]
災害関連死には様々な種類があります。災害関連死が世間に幅広く認知されるきっかけとなった、平成28年に発災した熊本地震での災害関連死の死因分類は以下のとおりです。災害関連死の死因で多くを占めるのは肺炎や気管支炎などの呼吸器系疾患、次いで心不全やくも膜下出血などの循環器系疾患となっています。
| 死因分類 | 人数(人) | 割合(%) |
|---|---|---|
| 呼吸器系の疾患(肺炎、気管支炎など) | 63 | 28.9 |
| 循環器系の疾患(心不全、くも膜下出血など) | 60 | 27.5 |
| 内因性の急死、突然死など | 29 | 13.3 |
| 自殺 | 19 | 8.7 |
| 感染症(敗血症など) | 14 | 6.4 |
| 腎尿路生殖器系疾患(腎不全など) | 7 | 3.2 |
| 消化器系疾患(肝不全など) | 4 | 1.8 |
| その他(アナフィラキシーショック、出血性ショックなど) | 22 | 10.1 |
| 合計 | 218 | - |
災害関連死を防ぐために取り組むこと
災害関連死を防ぐためには、避難時の生活環境を整える必要があります。
呼吸器系の疾患の予防

災害時では、断水により水が使えなかったり、歯ブラシやマウスウォッシュの不足、入れ歯の付け替え場所の衛生環境が整っていないことなどが原因で、口腔内の状態が悪くなります。口腔内が不衛生なままだと、虫歯や歯周病であったり、インフルエンザ等の感染症のリスクが上がったりします。
特に高齢者は、不衛生な口腔内で増殖した口腔内細菌が原因で、誤嚥性肺炎などの呼吸器系感染症のリスクが高まります。災害時に口腔内をきれいな状態で保つことは「命を守ること」に直結します。
非常時の口腔ケア方法
[出典:災害時のお口のお手入れについて]
非常時でも良いお口の状態を保つために、呼吸器系疾患の予防に効果的な口腔ケア方法を覚えておきましょう。
- 水がない時はガムを噛んだり口の体操をしたりして、唾液を出しましょう。唾液には口腔内をきれいに保つはたらきがあります。
- 水が少しあるときは、ハンカチやティッシュを少し濡らして歯の汚れを取るのも効果があります。
上記の他にも口腔ケアの方法はいくつかあります。詳細は以下の関連リンク内の災害時のお口のお手入れについてを参照してください。
循環器系の疾患の予防

食事や水分を十分に取らない状態で、車や狭い座席に長時間座ったり寝転んだりして足を動かさないでいると、血行不良が起こり血液が固まりやすくなります。その結果、血が固まったもの(=血栓)が血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発する恐れがあります。
エコノミークラス症候群の予防方法
[出典:エコノミークラス症候群の予防のために]
狭い避難所や車中泊中の車内、座席でもできることを意識して、エコノミークラス症候群を予防しましょう。
- ときどき軽い体操やストレッチを行う。
- こまめに水分補給する。
- かかとの上げ下ろし運動をしたり、ふくらはぎを軽く揉んだりする。
上記の他にも、エコノミークラス症候群の予防方法はいくつかあります。詳細は以下の関連リンク内のエコノミークラス症候群の予防のためにを参照してください。
避難先
市で指定している避難所の環境は、決して良い環境だとは言えません。多くの方が避難することを想定しているため、プライベート空間の確保やいびきや泣き声、足音といった音などは各個人が配慮・我慢する必要があります。
そこで、発災時の避難先の優先順位は以下のように考えてください。
- 自宅が安全な場合、在宅避難または自宅の敷地内で避難
- 自宅が安全でない場合、親戚や友人宅への縁故避難
- 縁故避難もできない場合、指定避難所へ避難
自宅、親戚や友人宅への避難であれば、少なくとも見ず知らずの人同士が生活する避難所よりもプライベートが確保され、比較的ストレスなども感じにくくなります。
日ごろからの備え
災害関連死を防ぐためには、被災時でも通常時に近いレベルでの生活を送ることが重要です。水や食料はもちろん、呼吸器系の疾患を予防するための歯ブラシや、体を清潔に保つための除菌シートなどの備蓄を充実させると効果的です。
ローリングストック法
水や食料、歯ブラシなど、災害時に必要となるものは日常でも使うものが多くあります。日常でも使うものは「ローリングストック法」を活用して備蓄しておくと、実用的かつ経済的でもあります。ローリングストック法について、詳細は以下の普段使いで簡単備蓄!ローリングストック法を参照してください。
災害時のために薬を備えましょう
[出典:災害時のために、持病の薬を備えていますか?]
高血圧や心臓病、糖尿病などの慢性疾患で薬を服用している方は、薬がなくなってしまうと命にかかわることも少なくありません。持病の薬は非常用に3日から7日分程度準備してあると、より安心できるのではないでしょうか。
持病がない方も、傷薬や風邪薬などが常備されていると、避難した先でケガをしたり体調を崩したりしても、重篤化するリスクを抑えることができます。
薬を余分に備えるときは、医師や販売店に相談し、保管方法や使用期限を守って備蓄しましょう。詳細は以下の関連リンク内の災害時のために、持病の薬を備えていますか?を参照してください。
トイレ問題
備蓄しておくもので忘れがちなのはトイレです。水を飲んだりご飯を食べたりすると、人は尿や大便を排泄します。排泄を我慢し続けると、膀胱や腎臓に大きな負担がかかり、膀胱炎や腎機能の低下のリスクがあります。非常時では家や避難所のトイレが使えるとは限りませんので、簡易トイレや便袋の備蓄もしておくとよいでしょう。






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更新日:2025年12月01日